店舗の駐車場へ入って行くや否や、前方にちいちゃな、きれいな、鳥…のようなものが。
「まあ、本物の鳥だったら、近づけばすぐに飛んで逃げるだろう」、と思っているうちに、あれよあれよと、それは車の目の前に。
「逃げないってことは、鳥のぬいぐるみか、オモチャか?」
本物の鳥だったならば、あの美しい色は、間違いなくカワセミなのです。
そのまま通り過ぎることができず、運転席から表に出て確かめる夫殿。
こわごわと、両手で、ゆっくり、すくう格好をしてしゃがみ込みました。
その様子、私は助手席から見てたのですが。
次の瞬間、立ち上がった夫殿の手の中には、かーわいいーー、カワセミちゃんが!
脈があるたびに身体がかすかに動くので、本物です。
何か理由があって、飛べなくなってるらしかったのですが、保護したからといって、野生動物は生きた状態で自然に戻すのが難しい、ということも良く知っていた私たち。
もぐらや、野うさぎの残念な最後を見送ってきました。
というわけで、かわいいのだけれども、困ってしまったのです。
だからといって、アスファルトがひかれた元の駐車場に放置する気にもなれず。
とりあえず、用事を済ませて、カワセミちゃんと一緒に家に帰ることにしました。
ケーズデンキの駐車場で保護直後のカワセミちゃん |
最初、車の中では私が両手でかかえていたのですが、直接触らない方が良いのではないだろうかと思い、かぶっていた帽子のなかに入れて、すこし薄暗い環境にしてみました。
こちらがじっと見つめていると、あちらもじっと見つめている、という状態が長く続き、どんどん緊張感が高まって。
これではストレスで死んじゃいそうだなぁ、と思い。
帽子ごとくるりと方向転換して、私と目が合わぬように後ろ向きにしてみると、しばらくして落ち着いた様子に変わってきました。
さらに、もっと暗い場所に置いた方が、目が見えなくなってかえって落ち着くのでは?と思い、助手席の足元に帽子ごと置いてみました。
保護した直後は、全身が硬直していて、首も動かず、足が立たず、コロリと転がってしまう感じがあったのですが、そのころから自分の足でしっかりと安定した姿勢がとれるようになってきたようで、それから20分ほど、私たちの自宅近くまで一緒にドライブという感じになりました。
このドライブの間、私たちの方はというと、「これからどうしようか~」、という車内会議。
結局、自宅近くでカワセミをよく目撃するのは、海にそそぐ川の河口付近なので、そこへ連れて行って様子を見てみよう、ということに。
一方、カワセミちゃんはというと、首がよく動くようになり、車に揺られながら、ときどき私たちの様子を横目でチラリと見たりして、静かに座っていました。
一度も声を出さなかったなぁ。
そして、目的地の川べりへ。
カワセミちゃんをかかえながら車を降りると、夕方で、野鳥たちがちょうど山へ帰るころ。
川の水の匂いがかすかにして、いろいろな鳥の声が、山の方から賑やかに聞こえてきました。
その川の前で立ち止まった途端、私の手の中で「ぶるっ!」と小さいけれども力強い振動が一瞬。
あっという間にカワセミちゃんは川の上流めがけて飛んで行ってしまいました~!
よかったぁ~~~!
その晩も、今朝も、夫殿とはその話ばかり。
一瞬この両手に感じた、あの野生の力強さは、忘れられません。